拾われた猫。



無理やり掴まれる手を振り払って、根城の前の見張りに泣きついてみせる。




「お侍様!

どうかお助けください!」



少し無理矢理ではあったが、頭に掛かった外套を少し浅くし、目を潤ませる。




見張りの男は顔を赤らめて、私を庇うように前に出た。




「公衆の面前で恥ずかしくないのか!

それにその汚れは元々あったものだろう!」



声を大にしてそう言われ、周りから白い目で見られる柄の悪い男たち。



居心地が悪くなったのか、舌打ちをして去っていった。



その様子を見て、わざとらしく「はぁ…」と息を漏らし、パタリと座り込む。



「大丈夫か?」



心配そうに腰を屈める見張りの人に、優しく微笑む。



「ええ、ありがとうございました。

けれど……、安心したら腰が抜けてしまいました」



瞳を潤ませたまま彼を見上げる。



< 412 / 443 >

この作品をシェア

pagetop