拾われた猫。
ご丁寧にお茶まで出してくれた。
「本当にありがとうございました」
外套を脱ぎながらそう言うと、彼は驚きの表情を浮かべた。
「緋い…」
ポツリと呟かれた言葉は想定内だった。
「この髪のせいで、私は人の輪の中に入れないことの方が多かったのです。
だから外套で髪を隠しているのですが、貴方が助けてくれた時は本当に嬉しかったです」
眉を下げて笑ってみせる私に、彼は困ったような顔を見せる。
そのタイミングで少し俯く。
「……すみません、…厠をお借りできますでしょうか?」
「あ、あぁ…!
ここを出て左手をずっと行ったところだ」
顔をわざと赤らめながら言うと、気まずい雰囲気をかき消すように、彼はわざとらしく明るく振舞った。
私はお礼を言うとスッと立ち上がり、言われた通りに左に出た。