拾われた猫。
「美華さん、こうやって過ごす時間は終わるけど同じ場所に住んでるんだから、また会えるよ」
私は自然とそんな言葉を口にしていた。
元の世界にいた時は考えられなかった。
人との別れに一喜一憂する人の気持ちなんて、その場の流れだと思っていた。
でも……、今なら何となく分かる。
……〝今なら〟?
私はどうして会ったばかりの人とこんなにも別れがたいと思うのだろう。
私は……前にもこんな感情をしたことが…。
「っっっ…!」
思い出そうとすれば、頭に激痛が走る。
「雨ちゃん!」
美華さんの声がハッキリと聞こえた。
───『雨ちゃん』
誰かと……かぶる…。
頭を抑えながらも美華さんを見ると、心配そうな、泣きそうな顔で私を見つめていた。
「…大丈夫。
もう大丈夫だから」
笑いかけると安堵の笑みを浮かべた。