拾われた猫。
「作ってくれたところ申し訳ないんだけど、今日は隊員の食べ物は幹部連中が用意してるはずだよ」
懐かしい台所の戸に寄りかかりながら、料理を作る〝女中〟に話しかける。
私の声にビクリと肩を揺らし、何かを隠しながらサッと振り返った。
「そ、そうなのですね。
やだ、私ったらこんなに作ってしまって。
幹部さんたちは普段自分たちでお料理なさるから今日もそうなのかと思っておりましたの」
繕うようにクスクスと笑う〝彼女〟に私もニッコリと笑ってあげる。
「申し訳ないし、今日は二人で食べようよ。
いつもは女中さんは食べられないけど、誰も居ないし、今日だけは特別」
「そんな……いけませんよ」
冷静に笑いを浮かべる〝彼女〟から感じる少しの焦りを見逃さない。
「それとも…食べられない理由でもあるの?
……例えば、その後ろに隠した手の物が原因とか?」
〝女中〟は顔を歪ませた。
更に追い詰めるように核心をつく。
「それは毒?
それとも睡眠薬?」
懐から取り出した紙はカサリと音を立てながら〝彼女〟の目に映る。
顔が青ざめていく様を見て、冷たく笑う。