拾われた猫。




甲高い音が道場に響いた。



刀を逆手で持って、自分の横で彼の刀を止めた。



力を込めるためにもう片方の手の甲で刀を押した。



それでも攻撃を止めることなく、空いている足で相手の鳩尾を狙う。



呆気なく片手で止められてしまったが、瞬間的に刀を支える方の手の力が弱くなったのを見逃さなかった。



すかさず刀を下に流して、掴まれた足を軸に体を捻らせる。


そのまま相手の首の辺りを回し蹴りする。



沖田総司は飛ばされたが、すぐに立ち上がった。




寸前のところで私の足から手を離して、軸をブレさせ、衝撃を減らしたらしい。



普通の反射神経ではない。



彼は笑っていた。

楽しそうだった。



私は彼に似ているけど、彼は私に似ていない。



多分……彼は戦闘狂だ。


強い人と戦いたいと願ってやまない人。


そこは似てない。



似ているのはきっと、……戦いの中でしか自分の存在を見いだせないところだ。



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