拾われた猫。



「だが、まぁ俺らは何も言わねぇ方がいいらしい」



原田左之助が苦笑いでボソッと声を上げる。



藤堂平助と永倉新八は頭に?を浮かべていたが、斎藤一は気まずそうに視線を横に向けた。



2人はその方向を見て、苦笑いを浮かべる。



「…な?」



原田左之助の言葉に2人は黙って深く頷いた。



斎藤一がチラリと見た先には、鬼の副長と恐れられる土方歳三が立っていた。



睨みつけるように2人の戦いを見ているが、止めようとはしなかった。



彼らがどういう経緯でこうなったのかは気になったらしいが、それ以上にこの勝負の先が気になっていた。




この道場の中に、彼らに水を差す者はいない。



いや、割って入ることこそが命取り。



彼らにはお互いしか見えていなかったのだから。



< 55 / 443 >

この作品をシェア

pagetop