拾われた猫。




「名は?」

「香月…雨」




ずっと不機嫌そうなこの人にどこか居心地の良さを感じた。



歳も離れすぎて話も合いそうにない。


彼の瞳の奥で好奇にも似た感情を読み取る。


皆がなぜ警戒しているのかは分からないけど、この人には威圧感はあっても殺気が微塵も感じられなかった。




「芹沢鴨だ。

お前は土方の小姓をしろ。

いいな?」



数秒ほど返事のない私を睨むと、またバタバタと去って行った。



土方歳三を見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。



「……え、土方さんの小姓になるの?」

「僕が勧誘してたんだけど」

「だったら俺の小姓でもいいじゃねぇか」




思い思いの不満を漏らす。


土方歳三は近藤勇と顔を見合わせている。


珍しく近藤勇までもが、苦い表情をしていた。



彼はあまり好まれていないらしかった。




< 87 / 443 >

この作品をシェア

pagetop