拾われた猫。
「名は?」
「香月…雨」
ずっと不機嫌そうなこの人にどこか居心地の良さを感じた。
歳も離れすぎて話も合いそうにない。
彼の瞳の奥で好奇にも似た感情を読み取る。
皆がなぜ警戒しているのかは分からないけど、この人には威圧感はあっても殺気が微塵も感じられなかった。
「芹沢鴨だ。
お前は土方の小姓をしろ。
いいな?」
数秒ほど返事のない私を睨むと、またバタバタと去って行った。
土方歳三を見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「……え、土方さんの小姓になるの?」
「僕が勧誘してたんだけど」
「だったら俺の小姓でもいいじゃねぇか」
思い思いの不満を漏らす。
土方歳三は近藤勇と顔を見合わせている。
珍しく近藤勇までもが、苦い表情をしていた。
彼はあまり好まれていないらしかった。