拾われた猫。
「芹沢…鴨」
その名前を口に出す。
さっき感じた居心地の良さはここにいても感じないわけじゃない。
けど、彼の静かに高ぶっている感情が何かを連想させた。
私は彼を嫌いになれない。
何故かそう思った。
「あの人は1回言ったら覆すことをしない。
仕方ねぇが、お前は俺の小姓ってことになる」
瞼を伏せてそう言った土方歳三に、コクンと頷く。
「結局希望に添えず、悪いな」
悪いことをしていない彼が私に頭を下げた。
それだけ責任感が強い人なんだろう。
芹沢鴨という不機嫌な男は、私の中に眠っていたものを呼び覚ます。
そんな予感がした。