宛先は天国ですか?



将太さんの言葉で、やっぱり璃子が嫌がっているんだと確信する。

…それなら、助けてあげないと。

将太さんに声もかけずに立ち上がり、璃子たちの方へ駆け寄ろうとする。

慌ててわたしが勝手に行くのを止めようと将太さんが伸ばした手が空回りして、わたしはふと足を止めた。


「あれ、誰か増えた…」

璃子たち、というよりは相手の人に何か声をかけている人物がいた。

相手の人の仲間か何かかと思ったが、なんだか違う様子。

この近くにあるアニメショップのビニル袋を引っ提げて、相手の人に強く何か言っている。


どうするべきか慌てるわたしとは裏腹に、将太さんはいかにも冷静だった。

そうして、目を凝らして彼らをよく見て、

「あれ、樹じゃないですか」

偶然、と驚いた様子で、その樹という人を見た。


「あの人、将太さんの知り合いなんですか?」

ふと問いかけると、将太さんは「まあそうですね」と言って笑った。

そんな会話をしているうちに、璃子の腕を掴んでいた人は追い払われていて、璃子はその樹さんから何かいろいろと言われている。

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