宛先は天国ですか?



代表の方が最後の挨拶に、今日の病院見学のまとめを話している。

それを聞いてメモをしながら、ちらっと璃子を見やった。

パチリと目が合ってしまって、すぐにすっとそらされてしまう。


…ああ、こんなことしてないで話に集中しないと。

前を向き直して、心の中で小さく首を振った。

今はそんなこと気にしないで、ちゃんと話を聞かないと。

ペンを握る手に、きゅっと力を込めた。


何分も、長く長くまとめの話が続いて、それからわたしたちの代表が短い挨拶をした。

ありがとうございました、とお礼を言って、出口に近い人から多目的室の外に出ていく。

わたしよりも出口の近いところにいた璃子は、先に外へと出ていった。


病院から駅まではバスが通っているらしく、みんなそれに乗って帰るという。

ただ、来るまでに30分あるらしいし、朝歩いたら30分くらいでついたし、わたしは歩くことにした。

バスになんて、気まずくてとても乗れやしない。

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