宛先は天国ですか?
そんなことを言い訳に、逃げているだけだと頭で分かってはいるのだけれど。
「あれ、暖々ちゃん歩いて帰るの?」
バス停からそっと歩き始めたわたしに、環奈ちゃんが声をかける。
まさか止められるとは思わなくて少し戸惑いながらも、わたしは素直に頷いた。
わたしが帰ろうとしたことで、ほんの何人かが「自分も歩こう」と歩き出す。
といっても本当にほんの4、5人くらいなんだけど。
「そっか、じゃあまた明日、学校でね」
環奈ちゃんはバスに乗って帰るらしく、ひらひらと手を振った。
わたしも手を振り返したあと、環奈ちゃんに背を向けて少し早足で歩き出した。
カツカツと革靴独特の音が響く。
院内では鳴らないように気を付けていたけれど、気にせず早足で歩くと鳴ってしまう。
早速信号に引っかかってしまい、さっとスマホを取り出した。
朝、将太さんからきたメールに、お礼の一言しか返してなかった。
なんかこれでメールが途切れてしまうのは少し寂しい。