宛先は天国ですか?
てっきりメールの中身を見られたと思っていたわたしは、相手は保護者であると、そう答える準備をしていた。
しかし聖也は一度わたしのスマホのあるポケットを見てから、わたしの方を見て、
「将太さんって誰?同級生?」
メールの内容ではない、別のところを尋ねてきた。
内容を見たと思ったから言い逃れできると思ったのに、まさか見られたのが宛名であるとは。
「えっと、いや、ほら、聖也も前に会ったことあるでしょう?」
すでに将太さんのことを知っている聖也に嘘は通じまいと、素直に話す。
名前までは覚えていなかったのだろうか、少し悩んだ末に、「あ、思い出した」と呟いた。
「あれか、買い物行ったときに偶然会った、佐川の知り合い」
そういえばそんな名前だっけ、と小さく首を傾げた聖也に、わたしはそうそうと頷いた。
どうやらまだただの知り合いだと思ってくれているらしくホッとした。