宛先は天国ですか?



目の前には、秋を感じさせる格好をした将太さんがいて、わたしを見下ろしていた。

…そう、今日も将太さんと会う約束をしていたのだ。

わたしは立ち上がり、将太さんの横に並ぶ。


「それじゃあ行きますか」

今日は喫茶店でのんびりとする予定である。

ファストフード店より、喫茶店の方がゆっくりとできる気がするし。

いろいろと話したいことがあるし、将太さんの話もいろいろと聞きたいし。


相変わらず、将太さんと歩いている間はあまり会話も弾まないまま。

それが落ち着く気まずさだって、最近はそう思えるようになった。

たくさわ話していても、こうして何も会話しないままも、どっちも落ち着くなって。

そう思えるから、将太さんと会うことを避けようとは思わない。

将太さんと距離があくことも、距離をあけてしまうこともなかった。

…まあ、もともと将太さんとの間に少し距離があって、なんでも話せる関係というわけじゃないから、隠し事をしても気まずくならないだけなんだけど。

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