宛先は天国ですか?
教科書をまじまじと眺めていると、そのうちにクラスメートたちが登校してくる。
相手から挨拶をされたり、気付いたときは自分から挨拶をしたり。
そんなことをやっているうちに、璃子が登校してきた。
わいわいと、教室が騒がしくなり始めた頃だった。
…良かった、静かだったらどうしようかと思った。
ただ、挨拶をすることはできなくて、わたしの横をさっと通り過ぎてしまった璃子にトークを送る。
『話したいことがあるのだけど』
それだけ送ってから、璃子が席についてスマホを取り出したのを見て、席から立ち上がる。
電源をつけっぱなしにしていたスマホに、『いいよ』というトークが届いた。
「…あの、璃子、おはよう」
下を向いていた璃子はなんだか怒っているように見えて、思わず怯む。
真っ先に出てきた言葉は挨拶だった。
璃子はそんなわたしにニコッと優しく笑いかけて、
「おはよう、暖々」
ふわっとした声でそう言った。