宛先は天国ですか?
…何日ぶりに挨拶を交わしたのだろう。
わたしがほんの少し勇気を出せばきっと、挨拶くらいこうして交わせただろうに。
まとめた話したいことを、話そうと口を開いたけれど声が出てこない。
璃子の前に立ったら緊張してしまって、言いたいことも忘れてしまって。
「…その、ごめんね、」
たくさん考えた言い訳も出てこなくて、謝罪の言葉がぽろっとこぼれた。
それに対して、璃子が小さく目を見開いた。
それから目を細めて口角を上げると、
「気にしないで、あたしも無理やり聞き出そうとしちゃったし」
ふるふると首を振りながら、そう言った。
「いや、あの、いつも隠し事してばかりでごめんね。
よそよそしい態度とったことも。
別に、璃子が頼りにならないとかそうじゃないから、璃子のことは信頼してるから」
だけど、まだうまく話せないの。
そう付け足すと、璃子は一瞬怪訝そうな顔をしたあと、まあいいかと言いたげに笑った。
「いいよ。あたしこそ、話したくないこと無理やり話させようとしちゃってごめんね」