宛先は天国ですか?
…別に話したくないわけじゃあないんだと、拳を握る。
そうじゃなくて、言い訳かもしれないけど自然と隠しちゃうだけで。
でも、話したくないと思われても仕方ないかもしれない。
「話したくないわけじゃ、ないから。今はまだうまく話せないだけで」
考えてきたこととは違う言い訳が、口からぽろぽろとこぼれる。
深く考えた言葉よりも、ずっとわたしの本心に近い言葉。
遠回しの言い訳よりも、ずっと真っ直ぐな言い訳。
「…うまく話そうとしなくてもいいんだけど、まあ、暖々が話せるまであたしは待つことにしたから」
待ってると、優しい声で、やわらかい笑みを浮かべて、璃子はそう言った。
大人びたその表情が、どこか将太さんと重なって見えた。
…って、将太さんのこと好きすぎかよ、わたし。
璃子とはまだ気まずいまま距離が空いているけれど、少し話した分だけ、また挨拶をしたりできるようになった。
…ほんの少しだけだけど、勇気出せたよね。