宛先は天国ですか?



でもまあ確かに、将太さんの言ったとおり言い訳がしやすいだろう。

好きな人ができたことへの怒りの矛先がわたしに向かなきゃいいけど。

…まあ、滅多なことがない限り会うことはないだろうし…。


でも、なんでだろう、少し嫌な予感がする。

夏帆さんが早野先生に似ていると気付いたからかもしれないけど、なんとなく。

…あれ、そういえば早野先生の下の名前ってなんだっけ…。

そういえば、親しい生徒から“かほちゃん”って呼ばれてなかったっけ…。


ますます、嫌な予感がし始めてわたしはじっと将太さんを見つめた。


「あの、さっきの夏帆さんの名字って教えてもらえますか…?」

恐る恐る尋ねると、将太さんはふと首を傾げてから、

「早野、ですが…?」

それが何かと付け足しそうな勢いでそう言った。


…偶然、だよね。

そんなまさか、…うん。

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