宛先は天国ですか?
1.
…やはり気のせいだったのかもしれない、と思ったのは、あれから10日ほど過ぎた頃だ。
10日過ぎて、家庭科の授業がすでに2回ほど終わったわけだが、早野先生はいつも通り。
世の中には自分と同じ顔が3人いるとかなんとかいうし、名前も偶然一緒だっただけかもしれないと、そう思い始めていた。
ただ、やはりいつも通りの中にも感じる違和感というものがあった。
わたしを見るときの視線だとか、なんだとか。
もしかして、と思わせる行動が多くて、モヤモヤしたままだ。
「佐川、どうかした?」
わたしの前の席に腰掛けて、そう声をかけてきたのは聖也だった。
不思議そうに首を傾げて、わたしに問いかけてくる。
「いや、あの…」
好きな人がいると言っていない分、なんだか言いにくかった。
いやきっと、病院見学の日の反応から聖也は分かっているのだろうけど。
…どうしようか、話すべきかと考えていると、聖也がわたしをじっと見つめた。