宛先は天国ですか?
はじめこそなかなか馴染めなかったが、積極的に話しかけるうちにクラスにすっかり馴染んでいた。
2ヶ月もすればわたしが転校生であることなどとうに忘れてるようだった。
そんなある日、祖母が言ったのだ。
「そうだ、のんちゃん、お母さんとお父さんにお手紙を書いてみなさい」
今聞いたら、「馬鹿じゃないの」とでも返すだろう。
しかしあの頃のわたしはまだぴちぴちの1年生。
純粋そのものだったわたしは、祖母の話に興味津々に食いついたのだ。
祖母は花柄の便箋を取り出して、鉛筆とともにわたしに渡した。
「それで、お友だちができたんだとお手紙を書いてみなさい。
きっと天国のお母さんとお父さんが読んでくれるよ」
あるわけない話にまんまと乗せられ、わたしは内容を一生懸命に考え、それはそれは丁寧な字で手紙を書いた。
(といっても所詮は小学1年生の字なので汚いが)