宛先は天国ですか?
「なんですか?」
わたしの顔を覗き込みながら、将太さんはニコリと微笑む。
わたしはそれを見て、涙でぐしゃぐしゃになった顔を、さらにくしゃっとして笑う。
「…わたし、ちゃんと立派な看護師になりますから、そうしたら将太さんのこと幸せにしますから。
だから、それまで待っててくれますか?」
口角を上げて目を細めると、まぶたに溜まっていた涙がポロッと落ちた。
パチパチとまばたきをするたびにこぼれ落ちていく。
将太さんはすっと目を細めて微笑むと、指でわたしの涙をすくい、軽く拭う。
「幸せにするは、私の台詞ですよ」
それから、ぽんぽんと優しくわたしの頭をなでた。
「もちろん、待ちますよ。…待ちきれないかもしれませんが」
ニコッと笑ってみせた将太さんに、わたしはニヤッと口角を上げた。
「わたしが看護師になる頃には三十路だもんね」
「うるさいですよ」
からかうと、コツンと軽く頭を小突かれた。
それから顔を合わせて、手を握りしめて、思い切り笑い合う。
そうして、わたしたちは、消えかけた煙ののぼる空を見上げた。
…幸せに、生きるから。