宛先は天国ですか?
完成したお手紙の封筒に、祖母が宛先と差出人の住所に名前を書いてくれた。
『佐川 暖々』と書いた祖母の、優しい笑顔をわたしはよく覚えている。
もちろん宛先は、『天国のお母さん、お父さんへ』。
それをなんのためらいもなく、わたしと祖母は郵便ポストにいれたのだった。
処分されるのは目に見えていた。
「ママとパパ、よんでくれるかなぁ」
「読んでくれるさ、きっとな」
しわのある手がわたしの髪を撫でていた。
だけどその時の祖母はほんの少しだけ悲しそうな顔をしていた。
それから、数週間経ったある日のことだった。
「のんちゃん、こりゃあ大変だよ」
パタパタと、祖母が大慌てでわたしの部屋を訪ねてきたのは。
「おばあちゃん、どうしたの?」
祖母は目を見開いて大変驚いている様子だった。
若干取り乱していて、わたしはそんな祖母を頑張って落ち着かせた。
やがて落ち着いた祖母が、震える手でわたしにとある手紙を差し出してきたのだが。
その手紙が、問題だった。