宛先は天国ですか?
3.
将太さんと会った日から、1週間くらい経った。
あれから、連絡先を交換し忘れたことを思い出し、なかなか会えないままだった。
連絡先さえ知っていれば会う約束だってできたはずだ。
あとから、少し後悔をした。
あの日の翌々日、予想通り璃子と環奈ちゃんから質問攻めにあった。
どんな話をしたかとか、どういう経緯で手紙を送り合うようになったのかとか。
だから、わたしは、秘密だと言って教えることはしなかった。
“わたしが天国の両親に宛てた手紙に、その人が返事を書いていてくれた”
なんて、この年になって平気で言えるわけない。
だから、とりあえず隠して誤魔化して。
そんな、ある日。
「佐川、今日暇?」
璃子たちと話している最中にふいに誰かが声をかけてきた。
クラスにあまり馴染まない、低すぎない低音ボイス。
声のした方を見ると、学校の中でも数少ない男子の1人、田辺 聖也が立っていた。