宛先は天国ですか?
聖也は多分、クラスに1人はいるおちゃらけキャラである。
男子の中ではダントツでよくしゃべるから、よくいじられている。
確かにすごく話しやすいし、話しやすくなきゃこうして一緒に帰ったりしないし。
「あー、腹減った…」
駅につく頃、聖也がふとそんなことを口にした。
お腹を抑えながら、大きくため息なんかついている。
「どっか寄ってく?」
提案してみると、聖也は表情をパッと明るくして、「賛成!」と笑う。
「確か向こうの駅近くにドーナツ売ってるお店があったはずだし、寄ってこう」
…ドーナツ、甘いし美味しいし、ちょうどよい量だし、いいかも。
わたしはいいねと言って、思い切り笑った。
電車に乗り、聖也が行きたいお店のある駅で降りる。
聖也の最寄り駅の2つほど前の駅で、自転車で行くには遠いと判断したのだろう。
確かに定期の範囲だし、ここまで来るのはわたしくらいだし、ちょうどいいと思ってわたしを誘ったのだろう。