宛先は天国ですか?



聖也の言っていたとおり、駅の近くにドーナツ屋さんがあった。

お持ち帰りもできるし、その場で食べていくこともできる。

この時間だし、やはり学生が多いから席が空いているか分からないんだけど。


「俺が注文と会計済ませておくから、先に席とっといてくれない?

あ、何にするか決めてって」

店内を見渡していたわたしに、聖也がふと声をかけてきた。


こういう、食事をするお店に来たとき、わたしは冒険をしないタイプである。

つまりいつも、買うものはだいたい決まっている。

たまに気分で気になるものを頼んだりするが、ほとんど同じものばかりだ。


「じゃあ、あれと、それから飲み物はココアでお願い」

ショーケースに並んでいる一つを指差して、財布を取り出す。

それからわたしの分の代金を聖也に握らせると、

「席とってくるね」

それだけ告げてお店の奥の方へと歩いていく。


…予想通り、店内は学生が多くて、とても騒がしい。

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