宛先は天国ですか?
ハッとして思い出して、「将太さん」と彼を呼び止める。
将太さんは驚いてか小さく肩を震わせたあと、振り返って首を傾げた。
「あの、連絡先、教えてくれませんか…?」
勇気を振り絞って尋ねる。
少しだけ声が大きくなってしまった気がして、少し、恥ずかしい。
頬が熱を帯びていくのを感じながら、将太さんを見つめて返事を待つ。
「別に、構いませんよ」
将太さんはふわりと笑みを浮かべて、すっとスマホを取り出した。
…案外、アッサリ了解してくれた…。
嬉しくてニヤけそうになるのをこらえて、わたしもスマホを取り出した。
連絡先一覧に追加される、好きな人の名前。
「ありがとう、ございます」
小さな声でお礼を言うと、将太さんは優しく微笑んだ。
ひらひらと手を振った将太さんは、バイクに跨りそのまま去っていく。
…そっか、バイクで配達してるんだ。
かっこいいな、なんてぼうっと背中を見つめていると、
「誰?佐川の知り合い?」
完全にアウェイになっていた聖也が声をかけてきた。