宛先は天国ですか?
聖也の質問に、わたしは一瞬回答に困った。
…知り合いというか、知り合いといいますか、好きな人と言いますか…。
だけどそんな、好きな人ですなんて言えるはずもなく、
「うん、そう、知り合い」
えへへと照れ笑いをしながらそう答えた。
聖也は少しの間疑うような目でわたしを見つめたあと、
「なんだ、ただの知り合いか」
やけに“ただの”という言葉を強調するようにして言った。
…ごめんなさい、わたしにとってはただの知り合いなんかじゃないです…。
心の中で謝罪をしながら、わたしは「そうなの」と聖也に微笑んだ。
「それにしても、やっぱ大人の人が働いてる姿ってかっこいいよね」
話の話題を変えようと、将太さんの去っていった方を見てそう言うと、聖也は「そうかなぁ」とため息混じりに言う。
それからわたしと同じ方向を見つめながら、
「じゃあ俺もバイトしてみようかな?」
なんて言って、チラッとわたしを見る。