宛先は天国ですか?
好きな人との会話のスクショまで送られて、予想通り延々と惚気話が続いている。
まあ、幸せそうで何よりだ。
画面の向こうでキラキラとした笑顔を浮かべながら文字を打つ璃子が、なんとなく想像できた。
やっぱり、そうやって惚気話とかを人に聞いてもらうのって、いいな。
…話す勇気が出ないけれど。
小さくため息をついてから、まだ時間もあるしと惚気を読み進めていく。
そんな中、
「佐川さん」
ふと名前を呼ばれて、わたしは小さく肩を震わせた。
聞き覚えのある声に顔を上げると、ニコリと微笑む将太さん。
「今日は私のが早いと思ったのですが」
負けちゃいました、なんて言ってへへっと笑い、わたしの隣に腰掛けた。
「別に、競っていたわけじゃないでしょう」
将太さんとの距離の近さに、わたしはたじろぎながらもなんとか答える。
そのうち不意にわたしのスマホを覗き込んだ将太さんが、
「お友達?」
とコテンと首を傾げるので、わたしは素直に頷いた。