宛先は天国ですか?



先に適当なものを注文して、ドリンクを取りに行って、とうとうやることがなくなってしまう。

そうすると会話もないままで、何を話せばいいのかわからなくなって。


「…将太さんって、彼女とか、いるんですか?」

ふと、気が付けばそんなことを口にしていた。


無言だった中、いきなりそんな質問をされたためか、将太さんは驚いて目をぱちくりとする。

注文した料理を届けに来た店員さんが、なんだか気まずそうにおずおずとして料理を置いていく。

わたしも自分で聞いてしまった以上、将太さんが何か答えるまで何も言えなくて、仕方なく料理を食べ始める。

将太さんもわたしに合わせて食べ始めて、それからふと笑みを浮かべた。


「彼女は、今はいませんね」

残念ながら、といってクスクス笑った将太さんの言葉にホッとする。


…彼女がいないってことは、わたしにもチャンスはあるってこと、だよね。

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