宛先は天国ですか?
そんなことを思いながら、そうですかと軽く流して、ピタリと食べる手を止める。
「え、今はってことは、最近まではいたんですか…?」
なんだかそれらしいニュアンスを含んだ言い方に、思わず突っ込んでしまう。
聞いたあとに、あ、と手で口を覆うけれどもう遅い。
…あからさまに、将太さんに彼女がいるかいないか気にしてる感じ、なんかヤダ。
将太さんは困ったような顔をして、「そうですねぇ」と言うと、
「1人だけ、高校生の頃に付き合っていた人がいましたが…、相手が大学に入学して少ししたら別れちゃいましたから。
…最近、ではないかもしれませんね」
少し悲しそうな顔をしながらそう続けた。
…別れちゃった、というか振られた雰囲気だよね、これ。
なんか、傷抉っちゃったかな…。
少し不安になるけれど、わたしは「そうなんですね」と流すことしかできなかった。
ふと目をそらすと、将太さんは視界の隅でニコッと微笑んだ。
「佐川さんは、どうなんですか?」