宛先は天国ですか?
いいじゃないですかなんて、わたしがその言葉一つでどれだけ舞い上がるか知らないで。
可愛いなんて言われたら、勘違いしてしまうってこと、知らないで。
好きな人に可愛いと言われることが、どれだけ嬉しいのか、知らないの…?
手が、ひんやりと冷たくて、頬が余計に熱く感じた。
ムスッとしたまま、ご飯を食べ進めると、将太さんも同じように食べ進める。
無言の時間が長く感じて、気まずさを感じ始めた頃、
「お、将太?」
そんな雰囲気をぶち壊すように、誰かが将太さんに声をかけてきた。
将太さんはパッと声のした方を見て、良かったと言いたげに頬を緩める。
「なんだ、康也さんですか」
いきなり驚かさないでください、と続けた将太さんに、康也と呼ばれたその人は「悪い悪い」と言ってへらっと笑った。
…謝る気ゼロじゃない。
へらっとしている様子の康也さんに心の中で毒づくと、彼はチラッとこちらを見た。
康也さんの後ろから彼に声をかけた女の人が、わたしたちの隣の席に座る。