宛先は天国ですか?



いつになっても、将太さんの横に並んで歩くのはドキドキとする。

なかなか慣れなくて緊張ばかりで、うまく言葉が出てこない。


「…そういえば、確か暖々さんって看護科の高校に通ってるんですよね」

確認するように問いかけてくる将太さんに、わたしは小さく頷いた。


…そっか、入試に合格した時とか、入学式の翌日に出した手紙に書いたんだっけ。

そのことを思い出し、何を聞かれるのだろうと将太さんの方を向く。


「学校は大変ですか?」

将太さんはふわりと笑みを浮かべながら、何気ないそんな質問をしてきた。

「まあ、大変ですけど、自分で入りたいと決めた高校ですし、みんないい人ばかりだし、楽しいですよ」

わたしがそう言うと、将太さんはそうですかと言ってニコリと微笑む。


いちいち、こうして話にきりがつくと会話がなくなってしまう。

何か話さないとダメだと分かっているんだけど、何の話題も思いつかない。

< 91 / 302 >

この作品をシェア

pagetop