宛先は天国ですか?
素直になれないというか、なんというか。
そんなんだからいつまで経っても相手にされないのよと、小さくため息をつく。
将太さんにはバレないようにこっそりとついたため息は、虚しくも車の音にかき消されてわたしですら聞こえない。
まだ、少しだけ風が生温かった。
それでも、秋の訪れをなんとなく感じさせる気温であった。
「では、ボールペン買ってきますので」
そう言い文房具のコーナーへと歩いていく将太さんのあとを追いかける。
…いや、ついていってるんじゃなくて、わたしの欲しいオレンジのペンも文房具コーナーにあるからなんだけど。
それでも何も言わずについてきたわたしを不思議に思ったのか、振り返り首を傾げる。
「どうかしましたか?」
とうとう声をかけてきた将太さんに、わたしは慌てて目をそらした。
「いや、あの、わたしも、オレンジのボールペンとメモ帳が欲しいので」
多分、わたしが祖母と電話をしている間は別のことをしていたのだろう。
わざと聞かないようにしたのか、興味がなかったのかわからないけれど。
でも、気を遣って聞かないようにしてたなら、興味ないわけじゃないから、嬉しいななんて、思ったりして。