宛先は天国ですか?
「メモ帳は、校内実習のときに使うんです。
そろそろ、テスト後に病院見学がありますから、なくならないように買っておこうと思って」
正直に答えれば、将太さんはやはり「熱心ですね」と言って笑った。
…別に、熱心なわけじゃない。
わたしは劣等生なんだから、みんなに追いついていくために書くことが多いだけ。
それですぐメモ帳が埋まってしまっているだけで、熱心だとか、そういうわけじゃないと思う。
「さて、さっさと買って帰りますか」
ペンを選ぶために丸めていた背中をスクっと伸ばす。
ピンッと伸ばされた背筋を見て、スーツ姿の後ろ姿を見て、不覚にもカッコイイなと思ってドキッとした。
「それじゃあまた、日曜日に最寄り駅の前でいいかな…?」
このへんに○⭕駅まで行ける路線の駅は一つくらいしかない。
わたしの家から1番近いその駅は、わたしのいつも利用している駅。
将太さんの言っている最寄り駅はきっとそこだろう。
「分かりました、ではまた」
そう言って別れた。
といっても途中までは同じ道らしく、途中まで一緒に帰ってからさよならした。
私服でラフな格好をしているのも素敵だと思うけど、やっぱりスーツ姿は特別かっこいいなと、そう思った瞬間だった。