月うさぎの戯言
「米搗きバッタは、そういう意味じゃねーけどな。それに俺たちゃ米搗きうさぎだ。昆虫なんかと一緒にすんな」

「それを言うなら薬草搗きだ」

「うむ、確かに。語呂は悪いが」

「だが薬搗きだと何かヤバくなる」

「……そうだな。『薬』をカタカナにしたら、なおヤバいな」

「あ、でもそんなうさぎだったら、あの昔話も変わっただろうにな」

 ふとナキが思いついたように言った。

「ほら、猿と狐とうさぎだっけ、が、老人に化けた帝釈天にそれぞれ施し物をするってやつ。あれ、うさぎは獲物を何も見つけられなかったから、てめぇの肉を差し出したじゃん」

「ああ…・・。つか、メンバー見てもわかりそうなもんじゃね? うさぎなんざ思いっきり草食獣だっての。器用でもねーしさ。やる前から無理ってわかるじゃん。大人しく野菜をあげれば良かったんだ。肉ばっかに拘らんで、野菜も食えっての。小学生か」

「だよな。大体帝釈天も酷くね? 正体隠してる間は、何も持って来られなかったうさぎを皆と一緒に罵ったんだぜ? 施しを受ける身で、それはねーわ」

「だな。俺、そんな奴に施ししたくねー」

「俺もキレるわ」

「でもほれ、ヤバいほうの薬搗きうさぎなら、そんな肉食ったら腹下すんじゃね?」

「薬『搗き』じゃなくて『漬け』のほうな」

「うさぎなりの復讐劇になったかもな」

「そのとき神話が動いた! だな」

 けけけけけ、と二匹のうさぎは黒い笑いを漏らした。


 十五夜お月様では、うさぎが楽しそうにお餅搗きをしています。


*****おしまい*****
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