肉食系御曹司の餌食になりました

早速、その話?
智恵の婚約祝いがメインのはずなのに、おかしいな……。

今日の半日、私の話を聞きたくてウズウズしていた智恵は、綺麗な顔の小鼻を膨らませて詰め寄る。


「実は内緒で付き合ってるとか?
告白されたの?」

「まさか、有り得ない」

「じゃあ、今朝のアレはなんなのよ」


給湯室前の廊下で、私と関係があるような言動を見せた支社長だけど、結局、あの後顔を合わせることはなかった。

『昼食は支社長室でご一緒に』と言ったくせに、【昼から外出予定が入っておりまして、また次回に】というメールが十二時少し前に届いた。

午前中はずっと迫る昼休みを気にして、通常の二割り増しで心臓を働かせていたというのに、拍子抜けもいいところだ。

外出予定が入っていたなら、なぜあんなことを言ったのか?

こっちは、なにをされるのかとヒヤヒヤしながら仕事をしていたというのに。

まさか、緊張しながら仕事をしている私を想像して、ひとり支社長室でほくそ笑んでいたとか?

なんて性格の悪さだ……。


ドキドキして損したという不満をまだ引きずっている私は、一杯目の白ワインをグビグビと飲み干して、二杯目を手酌する。

その勢いに目を瞬かせる智恵は、「怒ってる?」と首を傾げた。


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