肉食系御曹司の餌食になりました
「バレてしまいましたか。
そうです。昼のスケジュールを失念するほど歳は取っておりませんので」
「私で遊ぶのがそんなに楽しいですか?」
「遊ぶ? そう取られるのは心外です。
どうしたら私に関心を向けてもらえるのかという気持ちから、あのようなことをしてしまいました。
昼休みを待つ間、どのような気持ちでいましたか? それがキャンセルになり、どう感じましたか?」
それは……。
支社長が体を私の方に向け、真顔でじっと見つめてくるから目を泳がせた。
お昼を待つ間ずっと、支社長室で今日はなにをされるのかとハラハラしたり、柄にもなく胸を高鳴らせていた。
ドタキャンメールが届くと、ガッカリして怒りが湧いた。
そういえば、ガッカリしたのはなぜだろう?
彼を拒絶したいのなら、ホッとすべきところなのに。
まさか私……支社長に惚れてしまったのだろうか?
身バレの危険があり、かつ遊ばれて捨てられる結果が目に見えている相手に恋を……。
「違う!」
一度置いたワイングラスを掴んで、一気に飲み干した。
顔が熱いのは飲みすぎたせいで、胸がドキドキして苦しいのも全て酔っているせいだと思い込もうとする。
隣からは観察するような視線が注がれていて、それを意識すると更に心拍数は上昇する。