肉食系御曹司の餌食になりました
翌日、秋晴れの空の下をローヒールのパンプスをカツカツ鳴らして会社に向かう。
昨日は私にしては珍しく、ふらつくほどに飲み過ぎてしまったが、今朝の体調は悪くない。
早く帰宅したことがよかったみたいで、体内のアルコールはすっかり分解されていた。
会社の入っている総合ビルはすぐそこで、道路を挟んで信号待ちをしていたら、「おはよ」と声がして隣に智恵が並んだ。
「おはよう。昨日は気を遣わせてーー」
「で、どうなったの? 支社長と付き合うことになった?」
私の言葉を遮って目を輝かせる智恵は、あの後に私達がいい雰囲気になっていることを期待したみたい。
苦笑いしながら「ならないよ」と答えると、分かりやすく肩を落としてガッカリされた。
「じゃあ、あれからふたりで普通に飲んでただけ?」と口を尖らせて聞かれたので、青信号を渡りながら簡単に経緯を説明する。
「大量の肉料理を支社長がほぼひとりで食べた後、もう帰ろうという流れになった。それから家まで送ってもらって、上がらずにすんなり帰っていった。
あ、昨日の食事代、支社長の奢りだから会ったらお礼を言ってね」
「うん。なんか……健全だね」