肉食系御曹司の餌食になりました
十五分ほどで円山地区に入った車は、有名な菓子店や商業施設の立ち並ぶ一画にある、ブライダル会社の駐車場に入った。
二階建てのシンプルモダンな白い建物で、一階はウェディングドレスや礼服の販売とレンタルのサロンとなっていて、事務所は二階になる。
打ち合わせのためにここへ来るのは、今回が三度目。
雪とガラスのマリアージュ企画において、クリスマスに大通公園の特設ステージで公開挙式をしてくれるカップルがひと組必要で、それはブライダル会社の方に全面的にお願いしていた。
協力してくれるカップルがやっと決まったという連絡をもらい、新郎新婦との顔合わせと企画説明や謝礼についてを話すために今日はやってきたのだ。
「アサミヤ硝子の麻宮です。ご連絡ありがとうございました。本日はよろしくお願い致します」
一階入口で出迎えてくれたのは、この企画に快く協力してくれた花村さんという四十代女性のチーフマネージャーで、支社長の挨拶に続き私も頭を下げた。
前回二度の打ち合わせは二階の事務所内で行われたが、今回は新郎新婦が来店するので、一階のサロンで話をする予定になっている。
中に一歩足を踏み入れると、乙女の夢が詰まったようなウェディング一色の空間。
両サイドの壁際に二百着近いドレスが掛けられ、一番目立つ位置では純白のウェディングドレスを着たマネキンが二体と、ワインレッドのカラードレスを着たマネキンが一体、スポットライトを浴びていた。