肉食系御曹司の餌食になりました
この人は、なにを言っているのだろう。
間近という表現は、長く見積もっても一、二年以内でしょう。
今の状況や私の性格から言って、百パーセントないと断言できる。
そのとき来客を知らせるドアベルが鳴り、花村さんが「あら、いらっしゃったようです。麻宮さんと平良さんは、あちらでお待ち下さい」と言い置いて、来客の対応に向かった。
来客とは恐らく、この企画の協力者である新郎新婦だろう。
私達がパーテーションで仕切られた応接スペースで待っていると、花村さんに連れられて、新郎新婦が姿を現わした。
若い……そのことにまずは驚かされた。
ふたりとも十代と見紛うような容姿で、結婚の意思は確かなのかと心配してしまう。
そんな私の横では、動じない支社長が名刺を取り出して挨拶していた。
「アサミヤ硝子の麻宮と申します。この度はご結婚の運び、誠におめでとうございます。尚、我が社の企画にご協力いただきまして、厚くお礼申し上げます」
私も名刺を取り出して、同じような挨拶をする。
楕円形のガラステーブルに新郎新婦が着席するのを待って、私達も向かい側の白い椅子に腰を下ろす。
それから企画説明用の資料をショルダーバッグから取り出し、テーブル上に広げながらも、イメージしていたカップルと違うふたりに、まだ戸惑っていた。