肉食系御曹司の餌食になりました
ということは、結婚の話が出たのは半月前ということで、しかも酔った勢いとはかなり不安。
それに対して彼は、彼女の肩を抱き寄せてご機嫌を取りながら、言い訳を始める。
「いや、でも俺、マジで夢に惚れてるから。結婚したいとマジで思ってるし、結果、金もらって結婚式できるって話だし、なんかマスコミも来るっていうし、マジでこれでよかったって思ってるから。な?」
マジで心配なんですが……。
カップル探しは、全面的に花村さん任せ。
なぜこのふたりにしたのかという非難を込めて見てしまうと、花村さんは困ったような笑みを浮かべて取り繕うように言う。
「山田様と鈴木様は、急なお話を快く引き受けて下さって、本当にありがたいことです。
他のお客様にもお声をかけさせていただいたのですが、中々いいお返事をいただけず……」
なるほど。このふたりしか協力者が見つからなかったということか。
考えてみると、今年のクリスマスという急な日程や、観光客や見物人に見守られての結婚式。
加えてマスコミもOKのカップルを探し出すのは、難しい作業かもしれない。
花村さんの苦労を今初めて知って、責める気持ちは消え失せた。
それでもこのふたりで進めていいものかという懸念は消えず、隣に座る支社長を見ると、『大丈夫ですよ』というようにニッコリと頷かれた。