肉食系御曹司の餌食になりました
どうやら支社長は、このカップルでも問題なく企画が進められると考えているみたい。
私は末端の平社員だし、支社長がそう判断するのなら、従うのみだけど……。
それからは企画について丁寧に説明し、本番までの段取りやスケジュールを相談、調整して今日の打ち合わせは終了となる。
店の外までふたりを見送り、その姿が完全に見えなくなると、花村さんが「すみません」と謝ってきた。
「やはり不安をお感じになりましたよね。
もっと確かなお客様をと探したのですが、見つからないままに日にちが過ぎて、私も焦ってしまいました。後、三ヶ月もありませんし……」
本番まで三ヶ月を切っていて、ここがタイムリミットだったということみたい。
スタンダードな結婚式だと式場や披露宴会場の確保や招待状の発送など、どんなに遅くても半年前には動き出すそうで、そう考えると、よくギリギリまで協力者探しを頑張ってくれたと、花村さんに感謝の気持ちが湧いてくる。
申し訳なさそうにしている彼女に支社長は「いえ、ご苦労されたことは我々にも伝わっております。ご協力に感謝しております」と労いとお礼の言葉をかけ、それから紳士的に微笑んだ。
「大丈夫ですよ。万が一の場合も想定しておりますので、どうぞご心配なく」