肉食系御曹司の餌食になりました
その教会とは、同じ円山地区にあるらしい。
営業車で五分ほど来た道を引き返し、市道を南に折れると、なだらかな斜面のポツポツと住宅が立ち並ぶ中に、こじんまりとした白亜の教会が建っていた。
門の内側に車を入れた支社長は、降りる前に教会事情を説明してくれる。
「ここは古くからある教会なのだそうですが、近年、信者数の減少により経営が厳しくーー」
支社長の話によると、資金繰りに困った教会は、思い切って礼拝堂を綺麗に新しく改修工事して、結婚式の集客率を上げようと計画したそうだ。
今までなかったステンドグラスも取り入れる話になり、それで安く請け負ってくれそうな地元のガラス作家の園辺さんに依頼がきたみたい。
園辺さんはランプのシェードなどの小振りなステンドグラスは作成販売していたが、教会のサイズは初めてということで、かなり苦労したという話だ。
教会も色々と大変なんだなという感想を持ちつつ、車から降りて、石畳の道を礼拝堂の方へと進む。
小道の両脇には桜の木が二本。
紅葉した葉が綺麗だけど、春になればピンクの花びらが舞い散る中でのウェディングとなり、純白のドレスが映えてさぞ美しいだろうと想像していた。
礼拝堂の重厚感ある扉を前に立ち止まる。
支社長が横にあるインターホンを鳴らすと、『はい』と年配男性の声がした。