肉食系御曹司の餌食になりました

自分らしく、自分の思うように、自分の決めた道を歩む方が、人生は楽しいと思う。

私はそうやって生きているつもり。

地味なOLをしているのも自分らしく、時々Anneに変身して脚光を浴びて歌うのも私のやりたいことで、それも私らしい一面である。

自分の人生だから、私の望むように作りたい。
そう考え、それを実践しているのが、平良亜弓という人間だ。


「ガラス工房のオーナーになる夢、素敵だと思います。私に吹きガラスを教えてくれたときの支社長は、とても素敵な目をしていましたよ。真剣で楽しそうで」


あんな目をする彼は社内で見たことがなく、作られたガラス細工の素晴らしさからも、彼に似合う道のような気がしてきた。

彼の視線が私に向くと、なぜか寂しげにクスリと笑われる。


「考えさせて申し訳ありません。夢物語なんです。さすがにこの歳で進路を変えるのは遅すぎます。周囲にかける多大な迷惑を考えると、できません」

「そう、ですか……」


周囲への迷惑とは具体的にどのようなことか分からないが、大雑把に言えば、アサミヤ硝子が後継問題で荒れるということだろう。

それを望まないのも彼の意思だから、残念に思っても私が口を挟むべきではない。


「夢物語として、続きを聞いてもらえますか?」

「はい」


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