肉食系御曹司の餌食になりました
策士な彼に完敗です
◇◇◇
十一月に入ると寒さが増して、コートが厚手に変わる。
昨日の夜は雪が降っていたが、それは積もることなく朝の日差しにすぐに溶けて消えていた。
雪とガラスのマリアージュ企画の進捗状況は順調で、始動時の『本当に間に合うのだろうか?』という不安から今は、『きっと上手くいく』という期待に変化していた。
支社長がリーダーシップを取ると、安心して仕事ができる。
そのずば抜けたビジネス力に感心しつつ、時折、彼の夢物語を思い出していた。
本当にやりたいことは、ガラス職人なんだろうね。
私なら迷わずやりたい方へ進むけれど、彼は周囲に迷惑をかけるからできないと言った。
御曹司って、不自由なんだね……。
冷たい初冬の風に吹かれ、枯葉を踏む。
支社長の整った横顔を見ながら、彼の恵まれた身の上に同情していた。
私は今、支社長に同行して大通公園の西八丁目に来ている。
ここには有名な彫刻家が作った芸術的な石の滑り台があり、母親に見守られて厚着をした幼児が楽しそうに遊んでいた。
滑り台の付近は芝生だが、他のだだっ広いスペースは赤れんがふうの地面で、フリースペースとなっている。
初夏にはこの場所によさこいソーラン祭りの大型ステージが設置され、その他物産展や、ビアガーデンなど、各種イベントに使用される場所だった。