肉食系御曹司の餌食になりました
肉中心の食生活で、よくその引き締まったモデル体型を維持できるなと思いつつ、食券を店員に渡し、奥の小上がりに向かい合って座った。
「亜弓さん、私は月曜から東京本社に二日間の出張予定が入っておりますので、その間、こちらを進めておいて下さい」
ビジネスバッグから取り出して渡されたのは、クリアファイルに挟んだ書類と指示書。
指示書には、彼が不在時に私がやるべきことが事細かに書かれている。
特に質問すべきこともなさそうなので、「分かりました」と、それを自分のショルダーバッグにしまった。
今日は金曜日で、土日を挟んだ後に二日間の出張ということは、しばらく支社長の顔を見れないということか。
「なんだか寂しそうですね。私に四日も会えないのかと、残念に思っているのですか?」
「いいえ、全く」
どうやら彼は、私がそう答えるだろうと予想していたようで、喉の奥でクククと笑い声を上げていた。
そこにラーメンが運ばれてくる。
私の前にシンプルな醤油ラーメンと、支社長の前にチャーシューで麺が見えないほどの器、それと餃子が十個並んだ。
いつも通り上品な箸使いで、美しく肉を食べる彼を見ながら、私は静かに麺を啜った。
するとメガネが湯気で曇り、見え難くなる。