肉食系御曹司の餌食になりました

人の目があることを気にしつつも、胸を高鳴らせてキスを待つ私。

でも与えてくれずに距離を戻され、メガネを返されたのも、彼の作略なのか。

不満げな私の前で、彼は胸ポケットに手を差し入れ、金色に輝くカードを指に挟んで取り出した。


「なんのカードですか?」

「このホテルのスウィートの鍵です。
今夜は帰しませんので、覚悟して下さい」

「用意周到ですね……」


部屋まで取っていたのかと驚き呆れていた。

でもすぐに楽しい気持ちに変わり、プッと吹き出して笑ってしまう。

スウィートルームなんて地味な私には似合わないけど、せっかく彼が企んでくれたことだから、今夜はその甘さに浸らせてもらおう。

差し出された手に掴まって椅子を立ちながら、そんなことを考えていた。



ここはタワービル三十四階にある、スウィートルームの浴室。

ジャグジータイプの丸い浴槽はふたりで入っても余裕の広さがあり、背中を彼に抱かれて泡風呂を楽しんでいた。

泡の下では彼の手が、私の体をゆっくりと撫でている。

お返しに彼の太ももを洗うように撫でていると、耳元にかかる吐息の熱が増した気がした。


「こうして、あなたを抱きしめて触れることができるのは幸せなんですが、泡で見えないですね。
じっくり鑑賞したいので、ジャグジーの縁に座ってもらえますか?」


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