肉食系御曹司の餌食になりました
その言葉に自然な笑みがこぼれた。
彼が私のどこを気に入ったのかが、いまいち分からないから、美味しかったと言われるだけでもホッとする。
すると彼は小さな溜息をついて、「どうして自信を持たないのでしょう?」と問いかけてきた。
「それは……地味ですから。
好きで地味を貫いていても、男性の目にどう映るのかを知ってます。連れて歩きたい女じゃないですよね」
思えば子供の頃から地味だった。
両親も兄も地味だし、遺伝的な性質なのか、それとも育った環境の影響か。
高校生のときにひとつ上の先輩に恋をして、相手に好かれたいと、当時流行りのファッションやヘアスタイルに挑戦してみたけれど、そうした途端に恋心がスッと冷めてしまった。
こんなのは私じゃない。
私じゃない私を好きになってもらうことに、一体なんの意味があるのだろう?とひとしきり考えた後には、恋する気持ちさえバカバカしく思えた。
それ以降は『この人いいな』と思う男性が現れても、ステージ以外では地味を崩さなかった私。
そのせいでカイトを含め、Anneに惚れた男性達をガッカリさせて、短い期間で別れることを数回繰り返した。
そういう乙女心の足りない自分を正直に説明して、その上で「支社長は本当に地味な私でもいいんですか?」と再確認してみた。