肉食系御曹司の餌食になりました

それを気にする彼の胸元を軽く押して目を合わせ、「謝らないで下さい」と微笑んで見せた。


「支社長に仕事を押し付けて、私だけステージを楽しむのは嫌です。後少しですから、一緒に頑張らせて下さい」

「そう言ってもらえると楽になります。これが済めば、あなたの歌を楽しんで、ゆっくりとしたふたりの時間を作りたい。
しばらく我慢している分、夜は激しくなりそうですね。亜弓さんが壊れないといいのですが……」


私のお尻を撫でてニヤリと笑う口元に、赤くなるのでなく呆れていた。

しばらく我慢していたと言うけれど、一週間前に支社長の自宅で抱き合ったばかりなのに。

まだ交際期間がひと月ほどでも、どれだけ体を重ねたことか。

人並み外れた精力は、肉中心の食生活をしている影響だったりして。

だとしたら、そっち方面も適度になるように、やはり食事バランスを整えてあげないと……。



会議室を出た一時間後、支社長と別行動の私は、地下鉄に乗って円山公園駅で降り、そこから雪の中を十分ほど歩いてブライダルハウス・ロマンジュにひとりで向かっていた。

こちらの方も最終打ち合わせで、挙式するカップルと約二ヶ月半振りに顔を合わせることとなる。

支社長は別の仕事が入っているので来られず、この仕事の全てを任されていた。

と偉そうなことを言っても、当日の動きの再確認だけで、新しく取り決めることはなにもないけれど。

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