肉食系御曹司の餌食になりました

事業部を出てエレベーターで一階に下り、外に出ると、空には黒い雨雲が広がっていた。
湿気を感じ、雨が降り出しそうな気配が漂っている。

ひとりで徒歩三分の丸駒屋に行こうと思っていたけど、傘を持って出なかったのでやめにして、ふたつ隣のビル内にあるコンビニに足を向けた。

適当な物を買って、自分のデスクで食べようかと考えて。


昼時のコンビニは混んでいる。

なるべく邪魔にならないようカゴを抱えるように持ち、ペットボトルのお茶、抹茶プリン、サラダ、お握り二個を入れていった。

これくらいで十分だろうとカゴの中を見ていたら、隣から誰かの手が伸びてきて、私のカゴにカツサンドと牛カルビ弁当を追加する。

「えっ⁉︎」と驚き隣を見ると、久しぶりの麻宮支社長が立っていて、紳士的な見た目の口元には微かに悪意のある笑みが浮かんでいた。


「亜弓さん、私の分もついでにお願いします」


それはつまり、支社長のお昼ご飯を私に買えということだろうか?

なぜ?と聞き返したい気持ちを顔に表していたら、「後ろがつかえているので、早くレジへ」と急かされる。

確かにお握りを選びたい人が後ろで迷惑顔をしているので、納得いかなくても仕方なく、レジ待ちの列へと移動した。

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