肉食系御曹司の餌食になりました
どうやら彼がキャバクラに行ったことがバレて、怒られているみたい。
きっと結婚するに当たり、そういう夜の店には行かない約束を交わしたのだろう。
それが早くも破られて、彼女の逆鱗に触れたようだ。
このふたりに初めて会ったときの『大丈夫だろうか?』という危惧が、現実のものになろうとしていた。
確か二十一歳と二十歳のこのふたり、年齢的な若さの他にも、酔った上でのプロポーズや、お金をもらえるからうちの企画に乗って結婚するという即断ぶりが心配だった。
個人的にはこのまま結婚しても上手くいかない気がするし、『この喧嘩を機会に、もう一度よく考えてみては?』と言いたいけど、企画を進める者としては、こんなに直前で結婚をやめられては困るばかり。
焦ってまずは彼女の方を宥めにかかった。
「鈴木夢さん、同じ女性として怒る気持ちは分かります。ですが、どうか彼を許してあげて下さい。たった一度の過ち。一生一緒に過ごす相手ですから、どうか……」
次はふて腐れている彼に語りかける。
「山田遼さん、男性にしか分からない付き合い方があるというのは理解できます。ですが、まずは約束を破ったことを謝った方がいいのでは。
どうかお互いに歩み寄って下さい。明後日は挙式で、その後はずっと一緒に生きていくんですから……」